2012年8月26日日曜日

3Bの会の8月発表者でした。

 先週の木曜日 8月23日 淡路町ルノアールで第四木曜日に開催している異業種交流会3Bの会がありました。
 毎月交代でその月の担当者がテーマ本を決めて、各自その本を読んだ上で集まります。担当者がレジメを作成し発表した後、皆でその本について話し合います。

 私が決めたテーマ本は「インクジェットの時代がきた!」でした。今まで一冊の本を何度も読み返して読むことがなかったのですが、レジメを作成するために3回も読み返しました。
 なかなか良い経験になりました。3Bの会に感謝感謝!

3Bの会では常時メンバーを募集しています。

作成したレジメを後に貼り付けておきますので、興味のある方はお読みください。PDFが添付できるとよいのですが、コピペいたします。




3Bの会 8月定例会
「インクジェット時代がきた!」
液晶テレビも骨も作れる驚異の技術
2012.8.23 都澤
はじめに-傾きつつある日本のものづくり産業
 2012年初頭、日本の製造業は悪夢のような状況に陥った。
 同じ製品を大量に作って消費させるという20世紀型のモデルはもはや通用しない。
 高付加価値製品を目指す「デジタルものづくり」の技術として実用化されているのが「インクジェット」である。

序章-20世紀型ものづくりの終焉
 モノに囲まれた我々の暮らしは、大量の材料とエネルギーが使われ、製品の多くがゴミとなっている。
 型や版を作って大量生産するものづくりから、必要なところに必要なインクを打ち込むインクジェット技術を利用した究極の個別生産へと変わっていく可能性がある。

第一章-インクジェットとは何か?
・インクジェット以前のプリンタ
    ドットインパクトプリンタ インクリボンをピンで突く インクジェットやレーザーへ
    サーマルプリンタ 感熱紙…レジ用プリンタ 熱転写リボン…家庭用FAX
・インクジェットプリンタについて
    コンティニュアス方式…大型・高速・低解像度 ※ヘッドだけで1億円 印刷機に搭載も可
用途:カード使用明細や請求書 ペットボトルや缶ビンの賞味期限表示 ※高粘度インク使用可
    オンデマンド方式…小型・低速・高解像度 サーマル方式(バブルジェット)&ピエゾ方式
卓上プリンタ 水性染料インク 用途:デジカメの写真印刷 パソコンデータ出力用
大判プリンタ 水性顔料インク 用途:CAD図面 屋内ポスター 短期屋外ポスター 昇り旗
       油性顔料インク 用途;屋外ポスター 横断幕 垂れ幕 
       UV顔料インク 用途:ゴルフボール バット 立体物
       水性ラテックスインク 用途:屋内外ポスター等 
       レジンインク、捺染用昇華転写インク&ダイレクト昇華インク 用途:繊維捺染
 サーマル方式:インクを過熱して気泡を作りインクを押し出す。
長所:ヘッドを小型化しやすい。短所:インクの自由度が少ない。
 ピエゾ方式:ピエゾ素子の電気的変形を利用してインクを押し出す。
  長所:インクを選ばない。ノズル径によらずドットの大きさを変えられる。
  短所:サーマル方式ほど小型化できない。
・レーザープリンタについて
感光体ドラムのレーザーを照射した部分に帯電したトナーをつけ、紙に転写させ熱を加えたヒートローラーでトナーを定着させる。
インクジェットは紙に非接触なのに対し、レーザープリンターはドラムとヒートローラーが紙に接触し、ヒートローラーを過熱させるエネルギーが必要です。

第二章-ケーキに印刷、家にも印刷
①マスターマインド社は、インクメーカーと共同で可食インクを開発し、フードプリンターを販売。
②樹脂(レジン)が含まれたレジンインクでTシャツへのダイレクトプリンタが可能に。
 インクジェットによる捺染で従来の捺染工程を大幅に短縮。 
  昇華インクによる昇華転写プリントからダイレクト昇華プリントへ
③インクジェットプリント後のコーティング技術でサイディングも印刷。(ニチハ㈱)
在庫リスクの低減&デザインの自由度UP

第三章-2次元から3次元の印刷へ
 3Dプリンタ:平面印刷から立体物印刷へ
    光造形法 紫外線硬化樹脂を使用 ObjetPolyjet
長所:複雑な形状の作成可 
    粉末法 石膏やセラミックの粉に接着剤を噴射 スリーディーシステムズ ZPrinter
長所:フルカラー対応 内部も印刷 短所:石膏で強度に問題あり
    熱溶解積層法 ノズルから出した樹脂を熱で溶かしながら重ねていく
長所:実物と同様の樹脂を使用 小ロット製品の作成可
 用途:考古学や美術品のレプリカ作成し展示 建築コンペ用模型作成 オリジナルフィギア作成

 プリンテッド・エレクトロニクス
    液晶テレビ 液晶パネル内の配向膜&カラーフィルター作成
    ハードディスク 潤滑剤の供給
    金属配線 金属粒子を噴出し電子回路を紙やフィルムに印刷
用途:RFIDタグ(無線ICタグ)センサーネットワーク
    トランジスタ アモルファスシリコン以上の速度を実現する有機トランジスタ
インクジェット技術で半導体の薄膜に高い結晶性を形成
ダブルショット印刷法の有機TFTは、アモルファスシリコンTFTの10倍以上の速度を実現

 鋳物 砂型鋳造法 ダイカスト法 シェルモールド法 ロストワックス法 フルモールド法
  これらの鋳造法は職人技で後継者を育てるのが困難になっている。コンピュータによる3D CAD/CAMで作成された複雑な部品の設計図は作成できるものの、実際に製品を作成するための鋳造法案作成が困難になっている。
 鋳造メーカーである株式会社コイワイは、いち早くレーザー方式とインクジェット方式の3Dプリンタを導入し、単純な部分は従来の方法で、複雑な部分はプリンタで直接砂型を作成している。
 型屋は、デジタル化されたデータを一旦アナログに戻して立体に戻すしか方法がなかったが、レーザーやインクジェットで自動化できる。
第四章-ものから医療へ
遺伝子診断のカギとなるDNAチップ
 将来的に普及が期待されるバイオ/医療技術に遺伝子解析があり、遺伝子性の病気で遺伝子のどこに原因があるのか分かれば有効な治療が行える。
 人間を含む生物の遺伝情報は、DNA(デオキシリボ核酸)という物質として記録され、DNA内に含まれる4つの塩基、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の配列が遺伝情報となる。
 遺伝子解析では、調べたいDNAパターンを用意して調べるが、大量のパターンを一度に調べるためのDNAチップ作成にインクジェットが使用される。アジレント・テクノロジー社の技術は、先の4つの塩基をガラススライド上に4色インクのように打ち込んでいく。
 オランダのアジェンディア社は、このDNAチップを使って、がんの転移や再発の可能性を調べるサービスを提供している。

オーダーメイドの骨をつくる
 人間の体内でもインクジェット技術が使われそうで、実用かに近いのが人工骨を作り患部に埋め込むという研究である。
人工的な素材を骨として使おうという取り組みが長く行われ、金属やセラミックスが挙げられるが、強度はあっても劣化によるメンテナンスが必要である。また、成長する子供の問題や複雑な形状を加工するなど時間やコストの問題がある。
東大医学部付属病院とネクスト21が共同開発した人工骨は、これらの課題を解決すると期待されている。患部のCTスキャンを行い、それを元に3Dデータを作成し人工骨を3Dプリンタで作成する。人工骨はリン酸カルシウムでできており、内部に細胞や血管が入り込みやすい構造の作成が可能で、スピーディーに人工骨が自分の骨に変わっていく。
 
生きた細胞で組織をつくる
 人工骨のような均一な素材で一定の形をつくるのと、生体組織をつくるとの間には大変な違いがある。生きている組織とは大変複雑な構造で、血管やその他の分泌系が縫うように走っている。
 細胞が機能を持った「器官」として活動するためには、血管をはじめとする複雑な構造を作る必要がある。
 インクジェットプリンタのドットは細胞と同じサイズに達しており、3Dバイオプリンターで生きた細胞を液体中に3次元造形を可能にした。ただし、ゲルで包まれた細胞が並んでいるだけで、細胞同士の結合や相互作用はなく、人工血管ができるわけではない。
 20世紀以降動物発生初期段階の胚からつくる胚性幹細胞(FS細胞)や人工多能性幹細胞(IPS細胞が作成され、心筋や細胞を作り出しに成功しているが、複雑な組織や臓器作成の実現目途は立っていない。
 現時点では細胞を生かしたまま3次元的に配置できるレベルながら、今後国際的な進展も期待でき、さまざまな細胞を自在に組み合わせて積層し、組織構造を作ることも夢ではない。

終章-インクジェットで未来はどう変わるのか?
印刷物を個別に大量に刷るという考え方
 版を使った同じ内容の大量印刷から、オンデマンド印刷による可変データの消費者趣味別チラシ印刷や、書籍印刷サービス。少部数を低価格での提供が可能に。

既製品でなくオーダーメイドでモノを買う
アパレルの世界でも、インクジェット技術によるデジタル捺染で、人気のあるデザイナーオーダーメイドが手軽に。こうした個別化が、アクセサリーやフィギア、食べ物にも当てはまり、消費者が作り手として参加しながら消費する傾向へ。

デジタル技術でよみがえる製造業
 日本の家電メーカーを筆頭に、大規模な投資を行ったものの収益が上がらず苦しんでいる。インクジェットをはじめとするプリンテッド・エレクトロニクス技術が成熟すれば、開発や製造設備がコンパクトになっていく。
 参入障壁が低くなればベンチャー企業による参入も活発になる。

インクジェット技術の光と影
 エレクトロニクスやバイオでのインクジェット技術使用には大きな「弱み」がある。印刷では誤魔化せたノズル詰りが製品品質や歩留まりに影響する。
 高品質製品を大量生産する成功体験から抜け出せない日本企業は、安売り競争から抜け出すべきである。インクジェット技術には、他の製造技術と違い模倣が困難との特徴がある。

リソース最適化が進んだ世界はユートピアではない
 リソース最適化技術はインクジェットに限らないが、リソース最適化が日本でのものづくりを復活させる可能性がある。
 ただし、これによって日本経済が復活し、私たちの生活が豊かになるとは一概に言えない。リソース最適化されたものづくりは、知価創造的な産業であり産業分野の雇用を増やすわけではない。
 リソースの最適化の技術は、社会の在り方、私たちの仕事、仕事の在り方を改革していくことになる。

以上

     



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